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皮膚科学会・中部支部✏️わき汗の新しい外用薬

2020年10月11日
今週末も、土日はオンライン学会で、いろいろ知識をアップデートさせています
外はいいお天気ですが、パソコンの前で2日間じっとしています。

新しい話題として、新薬で、「わき汗」に保険適応の外用薬「エクロックゲルが12月ごろから処方できるようになります
毎年暖かくなる春先から、わき汗や手汗・足汗ならびに顔汗や全身の多汗などのご相談をたくさん受けています。
シャツの汗じみや臭いが気になる、手汗でプリントがふやけてしまう、緊張して人前で顔からポタポタ汗が落ちるのが恥ずかしい、調理師で仕事中に顔汗が落ちてしまい困る、など皆さんお悩みはそれぞれですよね

新薬は「原発性腋窩多汗症」という、他に基礎疾患のない「わき汗」のみに適応がある外用薬です。
手汗や足汗にはこれまで通り塩化アルミニウム製剤外用やイオントフォレーシスでの治療、顔汗などには内服治療などが選択されます。

また今回の学会のご講演でもありましたが、わき汗のご相談にいらした方の中には、「無汗症」の方や、「続発性多汗症」の方が紛れていることがあります。
わき以外の部位に全く汗をかけない「特発性後天性全身性無汗症」の方には、早期にステロイドパルス療法が必要です。
また、片側だけわき汗が多いという方を検査してみると、肺癌の胸髄圧迫による神経障害に由来するものだったという症例提示もありました。安易にお薬を処方するだけではなく丁寧な問診が必要ですね

エクリン汗腺は交感神経に調整されています。
交感神経終末から分泌されるアセチルコリンが、エクリン汗腺のムスカリン受容体M3に結合すると発汗が促されます。
エクロックゲルの有効成分がこのアセチルコリンの作用を阻害することで発汗が止まるという画期的な外用薬です

製剤の見本を見ると、①のキャップを外すと、②のアプリケーター(塗布具)があります。③の本体から薬剤をアプリケータに塗布し、アプリケーターを使ってわきに1日1回塗るというものです。
手に薬剤がつかない構造になっています。
アセチルコリンは神経筋接合部で筋収縮を促す神経伝達物質でもあるので、手に薬剤がついて顔などいろいろ触ってしまった場合に、顔の表情筋に作用してしまうことがあるかもしれません。
この構造なら思わぬ副反応も出にくく、よく考えられていると思いました

これまでの治療法として、
①塩化アルミニウム製剤外用薬
②A型ボツリヌス毒素製剤注射
③抗コリン薬内服 
④胸部交感神経遮断術
⑤マイクロ波照射 
などがあります。

①は、金属塩が汗孔を閉塞したり汗腺組織の萎縮を生じさせて汗を減らします。院内製剤のため自費ですが、比較的安価で処方することが多いです。稀にかぶれを起こす方がいます。手汗、足汗にはこの外用が第一選択です。
②のボトックスは、春から夏にかけてご希望の方は毎年本当に多いです
半年くらいピタッと汗が止まりますし、汗が減ることでにおいの軽減にもなります。
ただ自費治療となりますし、両側何箇所か注射をします。それでも毎日外用は面倒だわ、という方にはオススメの治療です
③は閉塞隅角緑内障や前立腺肥大症による尿閉がある方には処方できません。口渇やうつ熱なども出るため、適応を見極めて処方しています。
④は重症例に適応となり、手術のできる病院への紹介となります。「代償性発汗」という問題があり、わき汗は止まるけれどもそのほかの部位の発汗が増えてしまうかもしれないという問題があります。
⑤は自費で高額な治療となります。2〜3回治療を繰り返す必要があることが多いです。

来年、わき汗のお悩みが増える時期には新たな選択肢が増え、快適に来年の春夏を過ごせそうですね