名古屋市緑区の皮膚科、美容皮膚科

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小児皮膚科学会🖥小児アトピー性皮膚炎とスキンケア

1/9(土)、1/10(日)は小児皮膚科学会に参加しました

このコロナの状況下ですので、今回もWEB開催です

思春期ざ瘡(にきび)やあざ、遺伝性皮膚疾患、小児アトピー性皮膚炎の治療介入のポイントなどをお聴きすることができました

 

日常の診療で、乳児湿疹や小児乾燥型湿疹で受診されるお子さんが多いですが、よく親御さんに、「この子はアトピーですか?」「採血してください。」と聞かれます

 

アトピー性皮膚炎の定義

増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、多くはアトピー素因を持つ。

アトピー素因とは、

* 家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)
* IgE抗体を産生しやすい素因

診断基準

掻痒(かゆみ)

特徴的な皮疹と分布

慢性・反復性な経過(乳児では2ヶ月以上、その他は6ヶ月以上を慢性とする)

 

血液検査は補助的な指標です💉

ただしアレルギーの状態を評価するために、アトピー素因があるかどうかを見るために、IgE-RISTやIgE-RAST、TARC、好酸球などを見ることがあります。

乳児期に見受けられる軽い湿疹が、アトピー性皮膚炎に発展するのか、それともスキンケアのみで良くなるのかを区別する方法は、臨床症状で経過を見ていくことになります

 

アトピー性皮膚炎は、1歳までに60%のお子さんが最初のアトピー性皮膚炎の症状を発症しているとされています。

そして、乳児期のアトピー性皮膚炎は、早く発症するほど重症度が高いほど、アトピー性皮膚炎の症状がある期間が長いほど他のアレルギーを発症するリスクが高くなることが報告されています。

小児アトピー性皮膚炎を発症時期で分類すると、
1)乳児期発症
2)幼児期発症
3)学童・思春期発症
この3タイプに分かれますが、乳児期発症タイプへの早期治療介入が特に重要です。


アレルギーマーチについて

アレルギーマーチとは、日本小児アレルギー学会初代理事長・馬場先生が1970年ごろに提唱した概念です。
乳児期にアトピー性皮膚炎になった子供は、その後食物アレルギーとなることが多く、リスク比は3倍〜8倍と言われています。

子供の成長に伴い、アレルギーの症状がアトピー性皮膚炎から始まって年齢を重ねるとともに、
アトピー性皮膚炎 ➡️ 小児喘息 ➡️ アレルギー性鼻炎 ➡️ 成人喘息に変動していくことを
アレルギーマーチ」と言います。

このアレルギーマーチの始まりに経皮感作が関与している可能性が報告されています。

 

経皮感作と経口免疫寛容

アトピー性皮膚炎など皮膚に湿疹があると、そこに付着したアレルゲンに対する抗体が作られてしまうことが多数の研究結果で明らかになってきています。

この現象を「経皮感作」と言います。

成人でも、経皮感作について有名なところでは、2010年ごろに社会問題となった小麦タンパク入り石鹸(茶のしずく)による、小麦アレルギーの発症などがありました。

加水分解小麦の含まれた石鹸を毎日使用することにより、顔の皮膚から不完全な小麦タンパクが経皮吸収され小麦アレルギーを発症し、突然小麦製品が食べられなくなってしまった方がいました。

 

下の図は、食物アレルギーの発症機序を示すG.Lackらによる仮説の図です。


「経皮感作」という考えの一方で、

アレルゲンを症状がない量で摂取しているとアレルギーを改善する方向に働くという「経口免疫寛容」という概念があります。

 

卵、ミルク、ピーナツなどの食物が皮膚に触れることで食物アレルギーが誘導され、一方、食物を口から摂取することで食物アレルギーを抑制するというものです。

食物(母乳に含まれる微量のものも含め)が、皮膚(特に顔面の湿疹)に触れることで食物アレルギーが誘導されるということは、逆にいうと、湿疹をしっかり治療しておけば食物アレルギーの発症を防げる可能性があるということになります。

ここで、妊娠中や授乳中にお母さんがアレルギーになりやすい食べ物を制限しても、アトピー性皮膚炎の発症を予防することはできないという研究結果が揃っていますので、妊婦さんが食事制限をむやみにしてはいけません。

乳児期の湿疹を可能な限り早期に治療すること食物アレルギー進展の予防のために重要です


毎日の保湿剤外用で皮膚バリア機能を高めましょう!

アトピーや他のアレルギー疾患の発症には、皮膚バリア機能障害が関連していることが最近の研究で報告されています。

子どもの皮膚は角層が薄くまた皮脂の分泌量が不安定なことから、大人に比べてバリア機能が不十分な状態にあります。

アトピー発症リスクの高い新生児に、生後1週間以内から毎日保湿剤を使用することで、対象群よりアトピーの発症率が優位に低かったという研究も報告されています。

やはり乳児期のアトピー性皮膚炎と診断した場合、しっかりタイトコントロールをしていく必要があります


湿疹の治療

湿疹病変に対しては、以前お話ししたように、外用剤による寛解導入プロアクティブ療法による維持治療をしていきます。

保湿剤によるスキンケアと、湿疹にはステロイドやプロトピック軟膏を使用します。

プロトピック軟膏(0.03%小児用)2歳以上に使用可能な外用剤です。

外用を止めるタイミングが早すぎたり、外用が必要量ぬれていなくて、湿疹コントロールができていない方が多いので、丁寧に外用指導します

 

小児期は親御さんが外用を塗ってあげないといけないので手がかかりますね

わたしの子供たちもアトピー性皮膚炎ですので、皆さまのケアの大変さがよくわかります

わたしも昔は、お風呂上がりに逃げていく子どもを追いかけ保湿剤や外用剤を塗ったものです

いまや子供たちも中高生ですので、湿疹があっても塗らせてくれません

乳児期・小児期のスキンシップのできる時に、皆さま、お子さまのスキンケア頑張ってくださいね