名古屋市緑区の皮膚科、美容皮膚科

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アトピー性皮膚炎💻WEB講演会

アトピー性皮膚炎の治療は近年、目まぐるしい勢いで変化してきています。
既存治療で効果不十分であった中等症・重症アトピー性皮膚炎の皮疹が劇的に改善する時代となっています。

 



土曜日、日曜日はアトピー性皮膚炎に関する講演会がいくつかありました
今回はW EBで参加しました💻

土曜日は当院でも累計50人以上の方に治療させていただいております「デュピクセント」について💉
Type 2 inflamation Summit

  




デュピクセント とは

2018年に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」に対して保険適応となった注射薬です。

炎症を引き起こす物質「IL-4」と「IL-13」によるシグナル伝達を阻害してType2炎症反応を抑制する生物学的製剤です。


このデュピクセントですが、2023年9月に小児適応追加となり、
6ヶ月以上の小児から投与できる製剤となりました。



乳児期や思春期をはじめとするアトピー性皮膚炎のお子さん・ご家族は、疾患に対するお悩みを深く抱えている場合があります。
特に小児期には、見た目が気になり前向きに行動できないなど、皮膚の状態が心に大きな影響を与えることもあります。
また、乳児期の皮膚バリア機能低下により経皮感作を起こし、食物アレルギーを発症するケースもあります。

当院でも小児患者さまにデュピクセントを使用させていただいておりますが、多くの患者さまの皮疹が改善しています✨
また、小児では結膜炎の副作用の出現が少ないと言われています。

このデュピクセント、いつまで続けたら良いのか???
と、患者さまから質問を受けることもあります。

これについての正解はまだ確実なものはありませんが・・・
一生続ける必要があるわけではありません。

アトピー性皮膚炎の皮膚ではType2炎症が病態を形成しています。
皮膚の中では、Type2炎症の中心となるTh2細胞(2型リンパ球)以外にも、
多くの細胞や多くのサイトカイン(信号)が増えています。


ちょっと難しくなりますが・・・
resident memory T cell (レジデント メモリー T細胞)
という細胞は、皮膚の状態が良くなっても数年皮膚に存在していて、
少し皮膚を引っ掻いたり、感染したりする刺激でまたいくつかのサイトカインを産生し始め症状が再燃してしまうそうです。
このresident memory T cellが抑えられるためには少なくとも1年、できれば2年くらい必要ではないか、
ということをご講演でお聞きできとても勉強になりました✏️


重症アトピー性皮膚炎の治療薬として有効な「デュピクセント」ですが、
2024年2月、特発性慢性じんましん、にも適応追加となりました💡


デュピクセントは、以下の5疾患に適応のある薬剤です。
① アトピー性皮膚炎
② 喘息
③ 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
④ 結節性痒疹
⑤  特発性慢性じんましん 

①から④までは海外でも承認されているのですが、⑤の特発性慢性じんましんに対してはまだ日本でしか承認されていません。
どのようなじんましんの方にデュピクセントがいいのかなど、お聞きすることができ参考になりました✨

⬇︎過去のブログはこちら
https://asuka-hifuka.com/2023/07/15/アトピー性皮膚炎💻ドクター向けweb講演会をしま/





さて、日曜日は、また他のアトピー性皮膚炎の治療薬「オルミエント」と「イブグリース」について





オルミエントは、

アトピー性皮膚炎

円形脱毛症
関節リウマチ
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス感染症)による肺炎
に適応の通っている内服薬です。

皮膚科では、上記のうち、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症の難治例に使用します💊



アトピー性皮膚炎に対するオルミエント導入基準は
2歳以上 (2024年3月より2歳以上から使用できるようになりました!)
②既存の治療で効果不十分な中等症〜重症のアトピー性皮膚炎患者
③EASIスコア16以上 など





オルミエント」は、もともと、2017年より関節リウマチの治療薬として使用されてきた内服薬ですが、
2020年12月よりアトピー性皮膚炎にも保険適応となりました。

 

アトピー性皮膚炎には、インターロイキン(IL-4、IL-13、IL-31)などのサイトカインが関与しています。

サイトカインとは、細胞から細胞へ情報を伝達する物質で、信号のような役目をするタンパク質です

何らかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします


アトピー性皮膚炎患者さんの体内ではこれらのサイトカインが過剰に作られ、かゆみに関わる細胞の表面にある受容体にくっつくと、さらにかゆみに関与するサイトカインが過剰に作られて、症状が悪化していきます


オルミエントは、サイトカインが受容体に結合した後、細胞内の核へ信号が伝わる経路の一つ、
「JAK—STAT経路」をブロックすることで炎症やかゆみを引き起こす信号が伝わらなくなります。

よって、かゆみや赤みなどの症状が改善されていくのです




JAK阻害薬は痒みの改善が早いため、オルミエントは以下のような中等症以上のアトピー性皮膚炎の方に適しています
痒みを早く改善させたい方
円形脱毛症を合併している方
副作用が少ない薬剤なので、高齢の方にも使用しやすい

⬇︎過去のブログはこちら
https://asuka-hifuka.com/2024/05/09/オルミエント講演会に参加しました💻/

https://asuka-hifuka.com/2022/09/13/全体mtg✏%EF%B8%8F-円形脱毛症とアトピー性皮膚炎にオル/





円形脱毛症に対するオルミエント導入基準は、
①15歳以上
②症状が出始めて6ヶ月以上経過している方
③脱毛面積が頭部全体の50%以上の方

当院でも、20例弱の重症円形脱毛症患者さまに使用しております✨

これも、いつまで続けたら良いのか?という出口戦略について、エキスパートの先生のご意見を伺うことができ、大変参考になりました✏️

https://asuka-hifuka.com/2022/07/18/難治な重症円形脱毛症にオルミエント💊当院で/






そして、最後にもう一つ
アトピー性皮膚炎治療で一番新しい新薬「イブグリース」について

インターロイキン13(IL13)に結合するIgG4モノクローナル抗体です。



 



『イブグリース』は、サイトカインのうちのIL13だけを阻害する生物学的製剤です。
IL13と結合し、IL13α/Il4α1受容体複合体の形成を阻害し、その後のシグナル伝達を阻害することでType2炎症を抑えます。



また、半減期といって、薬剤が体内で代謝や排泄などで半分になるまでに要する時間が長いのが特徴です。



よって、通常は2週間ごとの注射でスタートしますが、患者さまの症状が落ち着いてきたら、1ヶ月ごとに治療間隔を延ばすこともできます。




ご講演で、イブグリースは途中から4週間ごとに間隔を延長できることが特徴であり、長期寛解維持できた後に中止しても効果が維持されるデータがあるとのことでした
あすくりでもすでに3名の患者さまに導入させていただいております
今後が期待できる薬剤です✨


https://asuka-hifuka.com/2024/05/13/全体mtg💉アトピー性皮膚炎の新薬✨イブグリース/




この2日間で、たくさんの知識をインプットすることができました✊
日々の診療の中で疑問に思っていたことも解消できました
明日からの診療に活かしていきたいと思います☺️



今や、
💎生物学的製剤は
  ① デュピクセント
  ②アドトラーザ
  ③イブグリース
  ④ミチーガ
💎JAK阻害薬は、
  ①オルミエント
  ②リンヴォック
  ③サイバインコ
とたくさんの薬剤が登場してきました
そのどれも、当院で治療が可能です‼️

皮疹が改善することで、QOL(生活の質)が向上します。
長年、かゆみ・赤みに悩んでいらっしゃた皆さまに笑顔と希望が届けられる治療だと日々感じております。

難治性の重症アトピー性皮膚炎にお悩みの方はぜひご相談くださいね🏥