昨日は診療後に、今日は午前7:50からWEBで学会に参加しました
美容皮膚科もしていますが、一般皮膚科もしっかり診療していますので、知識のブラッシュアップは怠らず、日々勉強です
今朝のモーニングセミナーでは、アトピー性皮膚炎の新規内服薬「オルミエント」についてのご講演を拝聴しました。
この「オルミエント(バリシチニブ)」、つい一昨日の4/23に、新型コロナウィルス感染症の3番目の治療薬として厚生労働省より承認を得た治療薬ですので、かなり気になるところですね
モーニングセミナーでのご講演は、「あきらめから、希望へ」というテーマのもとのご講演でした。
長期間赤みやかゆみに悩んでこられた患者様へ新たな選択肢が増えたことは本当に喜ばしいことです
この数年で、アトピー性皮膚炎の治療が劇的に変化しています
以前のブログで、注射薬「デュピクセント 」について
https://asuka-hifuka.com/2020/11/07/アトピー性皮膚炎の注射薬「デュピクセント-」/
外用薬「コレクチム軟膏」について
https://asuka-hifuka.com/2020/11/08/アトピー性皮膚炎の外用薬とプロアクティブ療法/
お話ししましたね。
「オルミエント」は、これまでのかゆみ止めなどの飲み薬とは異なる作用を持つ、アトピー性皮膚炎の内服薬です。
もともと、2017年より関節リウマチの治療薬として使用されてきた内服薬ですが、
2020年12月よりアトピー性皮膚炎にも保険適応となりました。
従来のリウマチ薬メトトレキサートや生物学的製剤などとは異なる作用を持つ「JAK阻害剤」と呼ばれる薬剤です。
JAK1とJAK2を特に強く抑えます。
アトピー性皮膚炎には、インターロイキン(IL-4、IL-13、IL-31)などのサイトカインが関与しています。
サイトカインとは、細胞から細胞へ情報を伝達する物質で、信号のような役目をするタンパク質です
何らかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします
アトピー性皮膚炎患者さんの体内ではこれらのサイトカインが過剰に作られ、かゆみに関わる細胞の表面にある受容体にくっつくと、さらにかゆみに関与するサイトカインが過剰に作られて、症状が悪化していきます
オルミエントは、サイトカインが受容体に結合した後、細胞内の核へ信号が伝わる経路の一つ、
「JAK—STAT経路」をブロックすることで炎症やかゆみを引き起こす信号が伝わらなくなります。
よって、かゆみや赤みなどの症状が改善されていくのです
この、JAK-STATに関与する外用薬が、コレクチム軟膏でしたね
一番気になる有効性ですが、BREEZE-AD7という治験において、16週投与後のEASI 75が47.7%と有効性が認められています。
つまり、投与16週後の時点で、EASIという皮疹スコアが75%以上改善した患者さんの割合が半分いるということです
演者の先生のご経験でも、投与2日後にはかゆみがすっと良くなる方が20%ほど、そこから40%ほどの患者さんのかゆみが改善されてくるとのことでした
ただし、一定期間通常の治療を行っても症状が良くならない難治性・重症のアトピー性皮膚炎の方へのみ、適応となります
外用薬は局所的に働き、毛包炎などのほかあまり大きな副作用はなかったのですが、内服薬は全身投与である分、副作用や適応に注意が必要です
副作用として重大なものに、感染症の悪化があります。
ご講演の先生の治療経験では、口唇ヘルペスの発症が多いようでした。
データーでは、口唇ヘルペスが3.6%、上咽頭炎が15.3%、毛包炎が5.4%ほどあるようです
そのため、事前に結核などの感染症がないか、服用開始後も新たな感染症がないかどうかを定期的に検査、観察する必要があります。
血液検査やレントゲンなどの検査が必要となりますので、事前検査は近隣の病院に依頼することとなります
内服方法:1日1回内服(2〜4mg)
保険3割負担の場合の自己負担金額
4mgを連日内服で、1ヶ月約47500円
2mgを連日内服で1ヶ月約25000円
デュピクセント 同様に、勤務先によっては付加給付制度による補助を受けられたり、収入によって高額療養費制度が適応となったりする場合があります
こちらにつきましては、まだ当院では導入していません
注射剤デュピクセントの使用経験は何例もありますが、デュピクセント には副作用としての結膜炎があります。
通常は点眼薬併用で注射を継続できることが多いのですが、結膜炎症状がひどくデュピクセント を継続できない方や、デュピクセント の効果不十分な重症アトピー性皮膚炎の方の新たな選択肢として検討する必要があるかと考えています