名古屋市緑区の皮膚科、美容皮膚科

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アナフィラキシーと「エピペン」💉

最近、ワクチンに絡んでメディアによく出てくる症状「アナフィラキシー

どのような症状かご存知ですか?

アナフィラキシーとは

アレルギー反応が短い時間で全身に激しく現れることをいいます。

アナフィラキシーの症状はさまざまですが、

最も多いのは、

皮膚の症状じんましん、赤み、かゆみ

次に多いのは、

呼吸器の症状くしゃみ、せき、ぜいぜい、息苦しさ

粘膜の症状目のかゆみ、くちびるの腫れ

その他に

消化器の症状腹痛、嘔吐など

循環器の症状動悸など

それらが複数の臓器に渡り全身に急速に現れるのが、アナフィラキシーショックであり、
血圧低下呼吸困難意識障害など命に関わる危険な状態に陥ることもあります

厚生労働省の人口動態統計の集計によると、日本におけるアナフィラキシーによる年間死亡者数は2019年に62名にのぼりました。


 

症状が出るまでの時間

アレルゲンの種類や個人差がありますが、数分で重症に至る場合もあります。

アナフィラキシーによる心停止までの平均時間は、

薬物で5分、ハチ毒で15分、食物で30分、といわれています
(全員が心停止に至るわけではありません。)

アナフィラキシーの原因

原因は食べ物がもっとも多く、続いてハチなどの昆虫、薬物となっています。

食品(最も多い):鶏卵、乳製品、小麦

食品(その他):落花生、そば、果物、大豆、いくら

昆虫:アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ

医薬品:抗生物質、解熱鎮痛剤、造影剤、麻酔薬など

その他:ゴム製品、金属

その他特殊なもの

運動+食品「運動誘発性アナフィラキシー」

特定の食べ物を食べただけでは症状は起きず、特定の食べ物を食べた後に運動をすると症状が出るのが特徴。
原因として、小麦、エビ、果物が多い。

口腔アレルギー症候群

生の果物や野菜、大豆(豆乳)などを食べた後に、唇や口の中、喉、耳の奥などにかゆみや腫れ、痛みを感じるものです。
特定の植物の花粉症と関連があるとみられています。

遅発型の「納豆アレルギー」と「くらげ刺症」

醤油や味噌、納豆などの発酵食品はもともとアレルギーを起こしにくく、大豆アレルギーの方でも納豆ならば食べられることがほとんどです。

しかし特殊な納豆アレルギーがあります。

通常のアナフィラキシーは食後2時間以内に発症することが多いのですが、特殊な納豆アレルギーでは食後半日(5〜14時間)程度後にアナフィラキシー症状が出現します。
本人も納豆が原因だと気づかないことがあります。

わたしが過去に診察した患者さんにこの遅発型の納豆アレルギーの方がいました。
歩いて皮膚科外来にいらっしゃり、じんましんと呼吸苦を訴え、アナフィラキシー症状を呈していました。
過去にも同様の症状があり、食事を詳細にお聞きすると、どちらも前日の夜に納豆を食べていました。

皮膚科医ならここでピンときます

▶️勤務していたクリニックは海が遠くないところです。

クラゲに刺されたことはありますか?とお尋ねすると、趣味がサーフィンでクラゲには何度も刺されているとのことでした。

クラゲに刺されるとPGA(ポリグルタミン酸)が産生され、これは納豆のネバネバ物質と同じものです。
大豆の方ではありません。

このネバネバのPGAが体内で分解されて吸収されるのに時間がかかるため遅発性にアナフィラキシーを発症すると考えられています。
これは化粧品にも含まれることがあり、納豆を避けるように気をつけていても特定の化粧品などを使用することでアナフィラキシーを起こしてしまうことがあります

 

治療について

初期対応
1:バイタルサインの確認(意識状態は?呼吸はできているか?血圧は?脈はあるか?など)
2:助けを呼ぶ(救急車)
3:アドレナリンの筋肉注射
4:仰向けにして30cmくらい足を高くする
5:必要であれば心肺蘇生

アドレナリン自己注射薬「エピペン」

アナフィラキシーを起こした場合にはすぐに病院へ行かなければなりません
しかし救急車を呼んだとしても、病院へ着くまでの間に刻一刻と症状が悪化してしまう恐れもあります。

その場合の対応策として、過去にアナフィラキシーを起こしたことがある場合に「エピペン」という自己注射薬を処方することができます。


エピペンとは

エピペンの有効成分はアドレナリンです。
アドレナリンは人の副腎で作られるホルモンで、心臓の働きを強め末梢の血管を縮めることで血圧を上昇させる作用があります。
また、気管支を拡張する作用、粘膜の浮腫を改善する作用もあります。
さらに、アナフィラキシー症状を引き起こす体内からの化学物質の放出を抑制する作用もあります。
このように、アドレナリン投与は即効性かつ有効性のある最も優先すべき治療法です
エピペンには、アナフィラキシーの治療に用いられるアドレナリン薬液と注射針が内蔵されており、オレンジ色の先端を太ももの前外側に強く押し付けるだけで、バネの力により一定量の薬液が筋肉内に注射される仕組みになっています💉

症状の進行を一時的に緩和しショックを防ぐための補助治療剤です。

アドレナリンの投与が早ければ早いほど救命率が高くなります

しかし、あくまでも補助として使うものなので、エピペン注射後も直ちに病院へ行く必要はあります

エピペンの処方には専門の医師の診断が必要で、エピペン登録医が処方できます

2011年9月に保険適用となりました。

あすか皮フ科クリニックでも、エピペンの処方をすることができます

 

また1年ごとに再処方を受ける必要があります。

わたしは、1年ぶりにお会いする患者さまには簡単にテストをしています

すると、10%くらいの患者さまは、使い方を忘れてしまっています
エピペンは、常に持ち歩き、常にいつでも使える状態にしてあることで、いざという時に役に立つのです。
日頃から正しい使用法をしっかり理解しておくことが重要です
もちろん再処方の際は、一から丁寧に使用法・使用のタイミングなど改めてご説明しています。
エピペンの箱の中には「練習用エピペントレーナー」が入っていますので、2〜3ヶ月ごとに練習をするようにします。

アナフィラキシーを起こしたことがある方は、万が一の時に備えご相談ください