名古屋市緑区の皮膚科、美容皮膚科

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アトピー性皮膚炎の新しい外用薬✨モイゼルト軟膏💊

ここ最近、アトピー性皮膚炎の治療に新しい治療薬がどんどん登場しています
長期間、つらい痒みに悩んでいらっしゃる患者さまにとって治療法が増えることは喜ばしいことです。

デュピクセント (注射剤)の投与を受けられている患者さまは当院で十数名いらっしゃいます💉
いずれも皮疹やかゆみの改善を認め、また血液検査でもTARCの低下、正常値化を認めております。
16週経過例では、EASI75(皮疹スコアの75%改善)ないしEASI90(皮疹スコアの90%改善)をほぼ達成しています。

ただし、デュピクセント は中等症から重症の患者さまにのみ適応の治療であるため、ご本人が希望されても、皮疹スコアや経過が適応にならない場合は導入できません。

(👇デュピクセント についてはこちら)
https://asuka-hifuka.com/2020/11/07/アトピー性皮膚炎の注射薬「デュピクセント-」/


さて、現在、治療に使用される外用薬として、
ステロイド外用薬
プロトピック軟膏(タクロリムス)
コレクチム軟膏         などがあります。

コレクチム軟膏は先日、小児にも適応となり、日々治療で処方させていただいております。
(👇コレクチム軟膏についてはこちら)
https://asuka-hifuka.com/2020/11/08/アトピー性皮膚炎の外用薬とプロアクティブ療法/

https://asuka-hifuka.com/2021/06/04/小児アトピー性皮膚炎の治療薬💊コレクチム(/


そしてさらに、新規外用薬が12月ごろに登場することになります
(まだ製造販売承認されたばかりで発売日は未定のため、予定より遅れるかもしれません


モイゼルト軟膏
という、PDE4阻害剤の外用薬です


アトピー性皮膚炎における炎症性サイトカイン

アトピー性皮膚炎では、遺伝素因や外的要因、環境因子などによって炎症反応が引き起こされます。
免疫細胞であるTh2細胞から、IL-4、IL-13、IL-31などの炎症性サイトカイン・ケモカインなどが放出され、これが作用することで、バリア機能の低下、かゆみの誘発、炎症が起きていると考えられています。
免疫細胞の内部で、c-AMPの濃度が低いと、炎症性サイトカインの産生が促進されます。
逆に、c-AMPの濃度が高くなると、炎症性サイトカインの産生は抑制されます。


PDE4とは

ホスホジエステラーゼ4という身体の中の多くの免疫細胞に存在する酵素(タンパク質)で、cAMPを特異的に分解し、炎症を引きおこす物質の産生にかかわっています
アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬患者さんの皮膚や免疫細胞では、PDE4が正常よりも多く存在しているため、免疫バランスの異常が生じているといわれています
そのため炎症が起こり、皮膚症状が現れます。
PDE4阻害剤は、このPDE4の働きを抑えることで、c-AMPの濃度を高くし、炎症を引き起こす物質(サイトカイン)の産生を少なくします。
身体の中の乱れた免疫バランスを整え、炎症を抑えて、皮膚疾患の症状を改善すると期待されます。

これまでに、尋常性乾癬やベーチェット病という皮膚疾患で、PDE4阻害剤の内服薬「オテズラ錠」が治療に使用されてきました。
今回、このPDE4阻害剤の外用薬がアトピー性皮膚炎の治療に適応がとおったことになります。


有効性について

国内のアトピー性皮膚炎患者さまを対象とした臨床試験
  1日2回、4週間塗布し、有効性と安全性を比較検討
  重症度評価IGA(全身症状を重症度点数で判定するスコア)の改善が見られた
  投与52週後のIGAが改善した割合は、成人で34.94%、小児で52.50%
  また、安全性に大きな問題は見られませんでした。
その他の有効性についてはこれからもう少し詳しい情報が出てくると思われます


皮疹の状態によって、ステロイド外用がいいのか、コレクチム軟膏がいいのか、モイゼルト軟膏がいいのかよく検討する必要があると思われます。
いずれにしても、新規薬剤により、治療の選択肢が増えることはとても嬉しいことです