名古屋市緑区の皮膚科、美容皮膚科

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学会誌📙重症ニキビの内服薬(イソトレチノイン)

本日までクリニックはお休みをいただいております🏥
明日、1月5日より診療再開となります。

お休み中はのんびりしましたが、常にお勉強は少しづつしています✏️
今日は学会誌に目を通しました

皮膚科学会誌では、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」を熟読しました📗


ガイドラインとは・・

我が国における最も標準的かつ最善と思われる診療を提示するもので、
日本皮膚科学会では各種皮膚疾患のガイドラインを作成しています
私たち皮膚科医が、エビデンスの集積された最も効果的な治療を行うべくよりどころとしているものです。


前回の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」は2018年に作成されました。
いま、アトピー性皮膚炎の治療として新たな薬剤がどんどん承認されているのもあり、このほど新しく改訂されました。
皮膚科専門医としてこれらガイドラインはすべて目を通していますが、改訂されるたびにやはり見ておかないといけないですからね。
知識の確認のつもりでお勉強です


美容皮膚科学会誌も届くたびに読んでいます📘

今回は、重症ニキビの治療薬「経口イソトレチノインの欧米の痤瘡治療ガイドラインでの位置づけ」という論文が載っていました。

 


イソトレチノインとは・・・

イソトレチノインはレチノイドとも言われるビタミンA類似薬です。
「ロアキュタン」や「アキュテイン」または「アクネトレント」という商品名で処方される内服薬です。
アメリカや欧米では、嚢腫や結節などが多発する重症ニキビの治療薬としてその使用が勧められている内服薬ですが、日本では保険適応となっていません。
そのため、自費診療となります。

イソトレチノインは、嚢腫や硬結を伴う最重症ニキビには有効な治療であり、現在、日本でも、経口イソトレチノインの保険適応承認を求める動きがあります。

日本皮膚科学会と日本臨床皮膚科学会の連名で、厚生労働大臣に承認申請の要望書が提出されているところです

副作用に注意して適切に使用すれば、強力に効くお薬です

あすか皮フ科クリニックでも、難治性ニキビに対してイソトレチノイン治療を採用しています。
実際に治療中の患者さまも何名かいらっしゃり、みなさま改善傾向にあります。

アメリカのガイドラインでは、従来の治療に不応な重症のニキビに対して、
・内服抗菌薬と外用併用療法の組み合わせと、
・経口イソトレチノインを、
第一選択として推奨しています。

また欧州のガイドラインでも、重症のニキビに対して経口イソトレチノインが強く推奨されています。
近年問題となっている「抗生剤多用による耐性菌の発生」を抑えるためだとも言われています。


イソトレチノインの作用
皮脂腺細胞を萎縮させ、皮脂分泌量を減らす、という独特の作用があります。
ある論文では、皮脂産生量が93%減少したとされています。
他に、
毛包の角化異常を正常化させ、面ぽう形成を抑制する
抗炎症作用

こうした作用により、過去の海外の論文でも、95%程度の重症ニキビが改善したとされています。

しかし、そのように効果的な内服薬でも、日本では承認されていないのはなぜでしょう?

それは、経口イソトレチノインの副作用にあります。
最も注意すべき副作用は、催奇形性です。

催奇形性とは、服用中に妊娠した場合に赤ちゃんに影響があるということです。
内服中も内服中止後しばらくも、必ず避妊をしなくてはいけません。
女性は、内服する前1ヶ月〜中止後6ヶ月、
男性は内服開始〜中止後1ヶ月まで避妊をする必要があります。

また、うつの発症、高脂血症や肝機能障害にも注意しなくてはいけません。
その他、皮膚粘膜の乾燥症状なども現れます。

よって、厚生労働省からも、医師の処方箋または指示書に基づき必要な手続きを行わない限り、個人輸入することは禁じられています

クリニックでは、まずは従来の保険診療での治療を優先し、
それでも難治な重症ニキビの患者さまにのみ適応としています

治療開始前に、避妊やその他の注意点についてしっかりご説明し、理解していただいた上で同意書に署名、導入となります。

避妊については、必要であれば経口避妊薬(ピル)の処方も行なっており、内服方法についてもご説明しております。
ただ処方するだけではなく、有害事象を防ぐための対策もしっかり行います

また、治療開始前に高脂血症や肝機能値異常がないか血液検査が必要であり、また、導入後も血液検査による副作用チェックも定期的に必要となります。

嚢腫や硬結を伴う最重症のニキビに有用な治療法ですが、安全性に十分注意した上での治療が重要です。
医師も、患者さまも慎重に判断する必要があります

当院でも、本当にその患者さまにとって必要な治療かどうか、また、定期的な血液検査で安全性を確認してからの処方となります。

イソトレチノインは医薬品であり、危険な内服薬ではありません。
しかしその注意点がいろいろあるため、ただ処方するだけで、管理のできないクリニックでは処方してはいけないと考えています。

必ずしも希望するみなさまに治療を行えるわけではありませんが、今までの治療でなかなか治らない重症ニキビさんは、一度ご相談ください
一緒に治療法を選択していきましょう